Wの記録

Wこと天羽の趣味の記録。主に山と遺跡史跡。信州飲食店情報へはリンクの食べログIDから、サークルサイトはツイッター@Wistoria_Tからアクセスください。     (2019年9月Yahooブログより移転。それ以前の記事は画像がズレて読みにくいですが、とても調整しきれないので。。。)

能・『龍田』(たつた)――大阪能楽会館

奈良県生駒郡三郷町にございます、龍田大社に因むお話です~@

この神社も色々と複雑です。

社伝では、祟神天皇代(3世紀ですかね…)に神託があったので、ここに「天御柱命国御柱命
の二柱を祀ったとなっていて、延喜式(10世紀成立)には「名神大社」として掲載されています。

しかし6世紀頃。
聖徳太子法隆寺を建設するにあたって、「龍田彦命&龍田姫命」という地元の神が力を貸しました。
それで太子は御礼に、法隆寺の近くにこの二柱の神を祀る龍田神社を建てたのです。
これは龍田大社とは全く別の神社で、斑鳩町にあります。

その後の天武天皇代(675年)、「風神を龍田に祀らせた」という記事あり。

その「風神」というのが龍田大社の境内摂社(本殿の南側)龍田彦命&龍田姫命のことなのか、
天御柱命国御柱命」の史実上の創建がこのことなのかは、わかりません。

どちらにしても、この「風神」の方が国家にとっても庶民にとってもググっとキたんでしょうね。
今では天御柱命級長津彦命(※)、国御柱命級長戸辺命(※)と神社側も認識し
(※両方とも記紀における風の神)、朝廷が行った風鎮大祭の評判も手伝って、

  「龍田の神=風神」

ということで落ち着きました。

天御柱命国御柱命」の又の祭神名を、わざわざ権威ある「級長津彦命級長戸辺命」にし
て、地元神の「龍田彦命&龍田姫命」にしなかったのは―――国家の意地、なのかなあ(笑)

ところがこの龍田という地域(現在は立野?)、紅葉が素晴らしく、和歌によく詠まれました。
「ちはやぶる神世も聞かず竜田川 ~」は有名ですね。
他にもたくさん、あるんです。

詠むなら紅葉、紅葉に似合うのは女性です。姫です。女神です。
そーすると、いつの間にか「龍田の神」=「龍田姫命」の方が強くなります。
平安時代のセンスからして、「シナトベ」じゃあ、ちょっと、ドロいですもんねえ…

そんなわけで現在、「龍田の神=龍田姫命=秋の女神」となっております。
そう、民衆にとって、龍田の神は女神なのです!!

そんなわけで、荒筋、いってみましょう♪

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とある僧が龍田参りの為に龍田川を渡ろうとすると、巫女に呼びとめられます。
巫女は

  「龍田川 紅葉乱れて流るめり 渡らば錦中や絶えなん」
   =龍田川に流れる美しい紅葉を散らしてはならない

と古歌を引用して、だからこの川を渡ってはいけない、と僧を止めます。
僧が、今は薄氷も張る季節なのだから関係ないと言うと、

  「龍田川 紅葉を閉づる薄氷 渡らばそれも中や絶えなん」

とも言うからやはり渡ってはいけない、と。

でも、巫女はちゃんと別のルートで僧を神社までご案内するのです。
なんだ。

境内には1本だけまだ紅葉が見事な木があって、僧が不思議に思ってうと、
巫女は「これは神木だ」と言って竜田の縁起を説く。

後半、はい、お約束です。
舞台の作り物内でお着替えなさって、龍田の女神となって舞ってくれました☆

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この最初の呼び止め、幕はあがっていましたが、姿を出さずに謡が先でした。
この次にあった『山姥』も同じく。
たまたま私が今までそういう演出の番組を観ていなかっただけなのか、それとも最近
の流行りなのか……謎です。

ワキが僧なので「また仏教に救いを求める神の話か?!」と思ったら、これは秋の風情と
神德を称える典雅な演目。禅的な要素があると言いますが、感じません。
(中入りのアイとの問答が長くて、うっかり眠ってしまったからだ……)
主題が紅葉なので、秋に舞われる演目です。

現在の竜田川は、生駒山を源として北から南に縦断する河川ですが、歌に詠まれる竜田川
この龍田大社あたりの大和川のことだそう。
だとしたら、結構な高低さがあります。渡らずに神社へ行くなんて、ムリ。
恐らく、神社近くの小川なども竜田川と呼んでいたのではないかと思われます。

正式名称は神社は「龍田大社」ですが、川は「竜田川」。
なので、流派によってはタイトルも「竜田」になります。

私が観たのは観世流の大西松諷社定期能で、『龍田』でした。「移神楽」の小書付。
コレだと囃し方が単調で今イチなのですが、総神楽なので見ごたえがあります。
女神のいでたちは「朱の舞衣に大口袴」。長絹の方がいいのにな……
天冠には紅葉が乗っていて綺麗でした。

場所は大阪能楽会館ですが、ここも中々です。
阪急梅田駅から徒歩5分、座席配列も気が利いていて、二階席は畳に座布団の升席!
(しかし飲食禁止。囃し方が見えないのでやめましたが…)気に入りました。

ただ……大西松諷社って何なんでしょう…
開演前には20分ほどの解説がついていて、スタッフの対応も良かったのですが―――
シテが老齢なのか膝がガクガク;; あああ……;;
そしても一つの『山姥』のシテは、なんと女性!

この女性シテ、体も細く声も細く、まるで成人前男子のようでした。舞いは得意なようですが、
地踏みでは腰が入ってなくて、筋力不足がバレバレ;;
最後の方で、足をあげた途端にふらついたのにはショックで泣けてきました。
こんなの観に、わざわざ大阪まできちゃったのか、私……
このショック、「宝塚を見に行ったら主役がホントの男だった」のと同じくらいヤな感じです。
上手けりゃいいってものでもないのに、上手くもないなんて、最悪です…

東京の宝生流だと女性能は全くの別運営ですが、ここは混合なんですね。
今まで食わず嫌いで女性の演能は避けていましたが、やっぱり今後も避けようと思います…

なおかつ、観客のマナーが悪っ!!
開演しているのに堂々と出入り、お喋りイビキ、ガサガサゴソゴソ。携帯も何度も鳴ってました。
能二番、狂言一番の全席自由5,500円だったのですが、レベルの低い会だったのかなあ…と
少々残念でした。