Wの記録

Wこと天羽の趣味の記録。主に山と遺跡史跡。信州飲食店情報へはリンクの食べログIDから、サークルサイトはツイッター@Wistoria_Tからアクセスください。     (2019年9月Yahooブログより移転。それ以前の記事は画像がズレて読みにくいですが、とても調整しきれないので。。。)

能・『竹生島』(ちくぶしま)

滋賀県は琵琶湖北部にございます、「都久生須麻神社」(つくぶすまじんじゃ)にまつわるお能です~@

――と言っても。

この神社は弁財天(=市杵島比売命)を祀る神社として名高いのですが、元々のご祭神は
湖北・金糞岳(1317m)の神、浅井姫命。
竹生島はこの女神の首が琵琶湖に落ちたものか?とも言われ(『近江国風土記逸文』)、
創建は雄略天皇代(420年)だとか。

724年、聖武天皇代に天照大神の神託があり、この島に弁財天を祀る寺院を建立。
ここから、名称は宝厳寺となります。

この『竹生島』の舞台は、延喜式を編纂させた醍醐天皇の御世(897~930年)。
つまり、この舞台上では神社というよりも寺院なんですね。

明治の判然令によって寺と神社が分離され、神社の名称は延喜式神名帳掲載の
「都久生須麻神社」となるのですが―――
明治期の発行物には「祭神:浅井姫命」となっているので、本来の「都久生須麻神社」の
ご祭神は浅井姫命だった模様です。

しかし、現在の祭神として一番に挙げられるのは市杵島比売命であり、浅井姫命の影は
非常に薄い。もはや「都久生須麻神社=弁財天」という認識に揺るぎようはありません。
大体、他者がキチンと「都久生須麻神社」と正式名称で表記しても、神社公式HP自体が
竹生島神社」となっているし(笑)

古くから湖・水神信仰があっただろうから、竜神さまについては特に深く考えないでいいと
思いますが、竜神拝所は重要です。
神社曰く「ここが一番の絶景」という場所にあり、眼下にある宮崎鳥居へ向かって願いを
書いた信楽の土器(かわらけ)を投げる「かわらけ投げ」という風習があるのです。
土器が鳥居をくぐると成就するとも言うので、一種の「投げ占」ですね。

これを踏まえて、荒筋をどうぞ☆

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前半、都から参詣に来た帝の臣下(ワキ)が、琵琶湖湖畔で通りがかった釣り船を呼びとめ、
竹生島まで乗せてもらう。
船には、棹差す翁(シテ)の他に、女(ツレ)が乗っていた。

島の神前へ案内された帝の臣下、共に来た女に「島は女人禁制のはずだが?」と質すと、
翁と女は二人して

「それは思い違いだ。島に祀られているのは女神の弁天さまで阿弥陀さま。
男女の分け隔てなどするものか。女が参詣するのは当然のこと。」

なんて粋なお答えをします。

そうなんです。
本来の仏教は女人禁制を掲げておらず、これは日本の風習なんです。

そして女は「自分は人間ではない」と言って舞台上の造り物(社壇)の中に入り、
翁は「自分はこの湖の主だ」と行って波間に消える。

ここから中入りです。
竹生島に仕える男(アイ)が帝の臣下を迎え、竹生島の霊宝を見せたりして持て成します。
この霊宝、マジメに聞いていると結構おバカなものが混ざっていて、さすがアイ(狂言方
だな…なんて思ったり。
しかし実は、これは単なる時間稼ぎ。
この間に、造り物の中でツレ、一生懸命「お着替え」をなさってますよ~。

アイは帝の臣下が望むままに岩飛びを見せて、そのまま退場。

後半はお約束です。
女は女神さまで、翁は竜神サマでした☆

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さああ~~~~舞いますよ!激しいですよ!
何たって『竹生島』は、この竜神の「舞働」が一番の目玉!売り!!
もう登場からしてすんごい!

既に鏡の間でダンダン踏み鳴らし、姿を見せたと思ったら一気に橋掛かりを
ダガダガダガダガ―――――っっ と走ってきます。ホントです。ホントに走りました。
すげえ……こんな登場、初めて見た;;
囃し方もすごいすごい。

しかし、この舞働はあっと言う間に終わってしまうのだ。
残念。

なので、小書きによっては女神がシテになるものもあるそうです。
勿体ないっ。やっぱ主役は、竜神サマでこその『竹生島』でしょう!

竜神が登場する前に女神が舞うのですが、これは優雅な舞い。
アイが退場するや造り物から出でて、お神楽調子で舞います。

この造り物なのですが、もうちょっと大きく造れないものなのかなーと、いつも思います。
あれって、ダイエーの試着室より狭いんですよ。
そんなスペースであの能の装束を替えるなんて、一体中では何が繰り広げられているのやら。
私が見た時の演者さんは豪快に着替えていらしたようで、造り物の布が結構ワサワサ動き、
人の形が想像できて、何だかエッチくさかったです。

「ああ、今、着替えてるんだわ、着替えてるんだわ…っ」(←妄想中

いや、よく考えたら演者は男だ。
ちっ。

どちらにしても上だけ替えるのですから、別に何も無いんですけどね(^^;)

この日の女神サマ装束は、金のしだれ花が入った薄紫の長絹に、白の大口、日輪の天冠。
派手さが無い分、しっとりお綺麗です@
朱系の長絹の場合もあるようですが、青系の方が湖水をイメージできていい感じ。
大体、竜神が赤頭に鬼神バージョンの装束でギラギラにド派手ですから、女神まで
紅紅する必要もないでしょう。

で、竜神は帝の臣下に宝珠を与え、「時には衆生を救う女神、時には国家を守護する竜神
となって、帝の世を守ろう」――――と約し、舞った後はサクっと波間に消えてゆくのでした。

そう、つまり、弁財天は市杵島比売命であり、龍神でもある。
ついでに浅井姫命でもある!ということで。
解決☆

前半の湖上移動の時に山々に花が咲いている風景が謡われるため、春に人気の演目です。

竹生島は、琵琶湖に浮かぶ中で一番大きい無人島。
神職さんも土産物屋さんも、毎日本土から通うのです(宿直は居ないのかな?)。
彦根や長浜、近江今津などから、フェリーで行かれます。

しかし……臣下が船に乗ったのってどこなんでしょうね。
ある謡では大津の真野(琵琶湖南岸)となってますが、北岸近くにある竹生島まではかなり遠い。
しかも手漕ぎ。ムリ。

島の名は、役の行者(634~706年、修験道の開祖)がこの島で修行した時の、霊験の話に
由来するとか…―
あ…! ここら辺からじゃないの?女人禁制って!!