Wの記録

Wこと天羽の趣味の記録。主に山と遺跡史跡。信州飲食店情報へはリンクの食べログIDから、サークルサイトはツイッター@Wistoria_Tからアクセスください。     (2019年9月Yahooブログより移転。それ以前の記事は画像がズレて読みにくいですが、とても調整しきれないので。。。)

『はだしのゲン』中沢啓治:集英社

最近、我らが島根県の騒動で話題となっている、戦後の広島が舞台の活劇風マンガです。
 
いや、ススメません、実は。
でもまあ、私も確かにこのマンガに人生思いっきり影響受けた者なので、ちょっと語ってみようかと。
 
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私Wの生家には、幼い頃から何故か(※)マンガがたくさんありまして。
(※:親世代は戦中生まれで、当時は「マンガ=読むとバカなるもの」という風潮があった)
 
手塚治(雑誌風の『火の鳥』が、確か初版……)、松本零士つげ義春(ちょいエッチ)、ドラえもん……などに混じって、ええ、あったのですよ、コレが。
 
若干4~5歳で読んでしまいました。
いわゆる「衝撃的」で「残虐性の高い」、「子供への心理的な影響が大きい」マンガを。
30年以上前の話。
 
でも別に、ショックは受けませんでした。言い方は悪いですが、所詮マンガですからね。
登山で爪がはがれる度に、特高の拷問を思い出しはしますけど。
ヒッチコック(眼球カミソリ?!)やジョーズ(海コワ――っ!)の方が、よっぽどトラウマです。
 
作品は、主人公が原爆投下前~戦後を生き抜く様を描いたもの。
反骨的で平和主義?の父親に似て、安易な世に迎合できない全うな少年ゲンが、原爆というよりも「理不尽な生まれの国・ニホン」(世情?)と戦いながら成長していく(したかな?)、そんな感じのマンガです。
 
確かに「原爆」というものを理解するには、妙なCGやデータよりは、よっぽど的確。
戦中戦後の日本の一部分を知る意味でも、戦争反対人間を造成するにも、うってつけ。
 
しかしなんか、ゲンの気性が激しいというか、融通利かなすぎて強情で、子供心にも少々ゲンナリした覚えが…
「あれは大人が描いたマンガだ」という認識がある今は、あの頃の違和感に納得。
ちょっと押し付け感が強いよなあって思います。
 
それもそのはず「人間の作品」には、「作者の意図」というものが必ずあります。
それが「読者のため」のものなのか「作者自身のため」のものなのかは、読者が見極め選択すべき。
その見極めを子供の頃からやらせないで、一体何が「教育」か。
 
「旧日本軍のありもしない蛮行などが掲載され」
  断言できるお前は神サマか?!
「子どもに間違った歴史認識を植えつける」
  いやいや、たった一つの作品を鵜呑みにするようなおバカな子供を日本から減らす努力を、大人がしようよ。
「過激とされるシーンだけを興味本位で読む児童も出てくるかもしれない」
  巷の書店に置いてあるマンガの方が、よっぽど過激だって=3
 
大体、興味本位で読んで何が悪い。
そうやって「悪いもの」から遠ざけて温室栽培した結果が、「打たれ弱い失敗作」や「こども成人」だって、何故まだわかんないのかなあ?
 
生家の本棚には他にも百科事典や学術本や薀蓄本、シェイクスピアやらトルストイやら、太宰治やら新田次郎(笑)やらもたっぷりありまして。
漢字がガンガン読める年齢になってからはそれらも乱読しましたが、ひらがながやっとの幼稚園児は、それでも読める絵本やマンガを「興味本位」で片っ端から読み漁るしかなかったわけです。
 
そこで「これは良い、これは悪い」と大人が制限してしまったら、世界はかなり狭まるし判断力も身につきませんよね。ある程度の統制は必要でしょうけれど、程度の低いものや目的がアダルトすぎるもの以外は、自由にさせた方が自然だと思います。実際興味があったら、何歳だろうとどんな手段を使っても入手するものですもん。
 
興味は学問の第一歩。
それを制限することは「学ぶな」と言っているのと同義だと、大人になった今、そう思います。
 
しかしそんな私でも、「ゲンを開架にしろ!」「閲覧制限なんかするな!」とは、思いません。
 
本当の良書なら、閉架だとうと絶版だろうと、賢い人はいつか見つけ出します。
そういう人間に育てるのが、親の、教師の役目じゃありませんか。
 
そしてこのマンガが「良書」「良い教材」とされ図書館におかれちゃうのは、「作者の意図」に共感する人間が教育分野に多くいるからでしょうね。
そいつらが「この作品を読ませればてっとりばやい」と感じたに違いありません。
教育に時間をかけられない、ゆとりの弊害なんでしょうか。
本来はきちんと教えるべきことを、簡単に読めるマンガを与えて済ませようなんて、何自分の職務を他人任せにしてんのあんたら、です。子供をバカにしてますよ、ホント。
 
というわけで。
 
「この作品に感銘を受け、この作品を総合的には良しと思っている、マンガ大好きでマンガ描いてる者」の意見としては、こうです。
 
「図書館に、マンガを置くな!」
 
 
                        
 
 
因みに私は、このマンガの「食糧不足で、お金があっても米一合、野菜一つ買えないシーン」を読んで、
  「自分の食べるものは、自分で獲得できるようになりたい!」
と強く思ったようで……。
 
幼稚園の時の「わたしの夢」は「お米を作る人になりたい」。
県内でも有数の進学校(らしい)に入っておきながら、気付いたら親の反対を蹴散らして農業へ進んでいました。
登山やサバイバル知識に貪欲なのも、多分そういうことなんだろうと思います。
 
マンガに人生左右されたくない人は、読まない方が無難です、これ。