Wの記録

Wこと天羽の趣味の記録。主に山と遺跡史跡。信州飲食店情報へはリンクの食べログIDから、サークルサイトはツイッター@Wistoria_Tからアクセスください。     (2019年9月Yahooブログより移転。それ以前の記事は画像がズレて読みにくいですが、とても調整しきれないので。。。)

『玄奘西域記』諏訪 緑:小学館:プチフラワー

yahooコミックで発見した、「三蔵法師マンガ」(90年代)です。
 
三蔵法師
水戸黄門や真田雪村と同様、尾ひれに背びれも四足もつけて、一大浪漫紀行となっちまった、中国のアレ。
昭和な日本人にとっては夏目雅子宮沢りえのアレ、の主人公ですね。もしくはNHK人形劇(っつーか、ドリフ)。
妖怪や魑魅魍魎と戦う、アクション活劇です。
 
しかしこのマンガは「講談と事実は違うんだよ」を前提に、風情と友情と「宗教とは?」を織り交ぜた、西域が舞台の歴史マンガ。シルクロードと言えばわかりやすいでしょうか。ノスタルジックでエキゾチックです。
そして小学生の頃からトルファンに憧れて、高校生で中国語に手をつけるも発音でさっそく挫けた私には、「4ヶ国語を操り取経(経典原本をインドから持って帰ること)を成し遂げた主人公」のお話は大変にファンタスティック且つ、ジャンプ的熱さを感じました。
 
宗教の是非、拝火教の滅亡など、アカデミックな話題もてんこ盛り。
バラモンとの論戦大会は、もっと綿密に30Pくらいやってほしかった……!!
 
更にこれ、立派に「少女マンガ」です。
よってチラホラ「BL臭さ」も漂いますが、それもまた往年の旧き良き時代の香り芳しく(最近のはアカラサマでイカン)。何しろ主人公が「僧侶」ですから、全てはこれくらいが良いのでしょう。
 
そして、各登場人物のキャラ立ちには目を見張るものがあります。
なのに、あくまで主人公はプレ三蔵法師の「玄奘」(うわ、変換候補に出てくるわ!)というのがまたニクいところ。
特にクマーナ国王。元々ピンで立てるこの人物を、潔く使い捨てる様にはもう、悶絶。
最近のマンガなら、「スピンオフ」とか言ってこいつを主人公に10巻くらい出せるだろうに……(しかもハーレクイン風にでもジャンプ風にでもより取り見取り)
いやホンとにプチフラワーって、凄いわ。
 
この作者の作品で、最初に読んだのは「三蔵法師が唐に戻ってから」のアレコレを書いた、『三蔵法師の大唐見聞録』でした。こちらはオリジナル(「西遊記」)に近い活劇風で、経典を焼いちゃえシーンはそれこそジャンプ掲載でもオッケーなくらい熱いマンガ。『玄奘西域記』とは雰囲気がかなり違っていて、しかしやはり宗教とは?が裏テーマになってます。
舞台は唐(中国)、仏教の対照に出てくるのは、道教新羅の王子も出てきて、やはり歴史欲をくすぐる作品。
文句をつけるとすれば、「せめてもう少し武媚を美人に」でしょうか。
 
でも読んでて面白く、激しく感動したのは、こちら。
絵は確実に『~大唐見聞録』の方が綺麗ですが、マンガとしてのワクワク感も何もかも、この『玄奘西域記』の方が、断然上です。こんなに泣いたマンガは、北斗の拳(30年前…?)以来だし…!!
やっぱり、マンガって絵じゃないんだよなあ……
 
そんなわけで、懲りずに再度手をつけました、中国語。
「e」の発音でさっそく挫けてます。
 
全4巻。