Wの記録

Wこと天羽の趣味の記録。主に山と遺跡史跡。信州飲食店情報へはリンクの食べログIDから、サークルサイトはツイッター@Wistoria_Tからアクセスください。     (2019年9月Yahooブログより移転。それ以前の記事は画像がズレて読みにくいですが、とても調整しきれないので。。。)

博物館/地学◆中央構造線博物館(長野県)

日本ジおたく五大呪文(聴いただけでゾクゾクするヤツ)の一つ、中央構造線
1億年前から形成され、関東から九州までの列島を横断するステキな大断層です。略称「MTL」(Median Tectonic Line)。

距離としては日本一の断層なのですが、既にブツブツと断裂していて連動はしていません。その東西端は曖昧で、諏訪以東は不活動。九州では構造線の上に阿蘇山が出来てしまったため構造線がどこなのか不明になってしまい、活断層中央構造線断層帯」として認定されているのは近畿~大分間のみ。。。

しかし一番有名なのは、糸魚川-静岡構造線」フォッサマグナ西端)と交じり合う諏訪盆地より南のここ、酷道オタク垂涎の大鹿村ではないでしょうか!

◆◇◆◇ 中央構造線博物館(南信:大鹿村) ◇◆◇
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大鹿村は東半分が南アルプスなので、入村できるルートは南・北・西の3つ。
アッチ系の観光客は「北」の有名観光地「高遠」(伊那市)から南下して、例の磁場な「分杭峠」越え。 ↓駒ヶ根市  ↓↓ この北(上)が伊那市   ↓↓ここから入る

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普通じゃない来訪者はその酷道を「南」の飯田市(↑↑ここ)から北上して村の南端「地蔵峠」から入ります。どちらもR152。
しかしこの時期、大雨による土砂災害が重なって両方とも通行止だったので・・・・・・いやそもそも普通の観光客だから、「西」の松川町から県道22で入りました。

松川町から県道59を東へ道なりに進み、県道22に合流してトンネルを越えるとそのまま直進でR152になり、大鹿村騒動記の舞台ともなった神社や鹿塩かしお温泉がある塩川方面に向かいます。が、コロナで日帰り利用不可だったりするのでここは大人しくR152で右折。すぐの橋を渡ると、左手に役場があります。

R152をしばらく行くと右手に道の駅があり、ここの川に向いたテラスから「大西山崩落」の崩落斜面が見られます。というか、もう見えてる。   後ろの山のコレ↓↓

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村内の通行止情報や営業情報も入手できるし、FreeWifiもあるし、お菓子や物産やご当地カレーも売ってる。便利です。村内には他に観光施設と呼べるものもコンビニも無いので、休憩や食料調達はぜひここで

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更にR152を南下し、村の中央を南北に流れる鹿塩かしお川の東支流小渋川(源流:赤石岳)を橋で渡り終えてすぐを右折すると、行き止まりがろくべん館で、その手前左手が博物館。 ここも ↓↓大西山の崩落斜面が後ろに見えてる。

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庭に色々な岩石が展示されています(館内で満足した+雨、でスルー・・・)↑↑
 ★★入館料¥500(屋内・野外ガイド¥1500/h)、火曜休館(←注意!)★★
通行止めと観光施設のコロナ休業に加えて平日だったのもあってか、来館者は自分の他に1名だけでした。 ↓↓入口にはお約束のクマの剥製

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入って右手の展示室がメインですが、その前にこの展示室のこの ↑↑前の廊下の「夏休みの自由研究発表」みたいな貼出し説明を全部読みましょう。ここ、重要です
これがまた、当館研究員(というか構造線オタク)の渾身のアレコレで・・・・・・

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  びっしり↑↑             諏訪盆地の変遷!↑↑
日本列島が大陸から離れて形成された成立ちから「断層ってなんですか?」と初歩的なことに始まり、中央構造線東から西端まで紹介!!

   ↓↓マイナーな東海     ↓↓核心の信州       曖昧な関東↓↓

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  ↑↑ 噂の九州まで・・・!!  こ・・・これを本にしてくれ~~っっ

もう、大興奮です。。。以上をきちんと理解した上で、いよいよメイン展示室へ。
小さい部屋ですが、わかりますでしょうか。
←←←左手(床が小豆色)が中央構造線内帯(西側)の「領家変成帯」

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           右手(床が青灰色)が外帯(東側)の「三波川変成帯」→→
で、それぞれの区域から採取したの岩石が、それぞれの壁際に展示

 ※元々「ここが中央構造線」と思われていた真上に博物館を建ててこの断層再現展示を実物の真上に
  設置したのに、その後の調査で実際はもっとろくべん館寄りにある――と判明したのだとかf:id:wistorian:20190926193801p:plain


< 領家変成帯 >

「火山直下のマグマ高温下で変成」された岩石。固く急峻な地形で、「崖崩れが発生しやすい」真砂マサ土になる。大崩落の大西山もこっち側ですね。

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花崗岩 は北アにも多い ↑↑。「地下でマグマが固まった鉱物結晶の岩石、風化して真砂マサになりやすい」ほほう。常念は全然だけど、燕の稜線はイイ感じに風化してコマクサが繁殖してるもんなあ・・・

マイロナイト(断層圧砕岩)
断層深部で圧力をかけられて延びて変形した岩石。石英が再結晶した固い岩石。

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流動した流れが見える↑  領家と三波川の間に存在する鹿塩マイロナイト帯は、花崗閃緑岩元だそう。


< 三波川変成帯 >

「海洋プレート(フィリピン?)が大陸プレートの下に沈み込んだ深い所で高圧力下で変成した岩石」「比較的緩やかで地滑りが発生しやすい」サバ土。結晶片岩緑色片岩石英質黒色片岩。。。って、谷の両側とも脆いってこと?f:id:wistorian:20190926193801p:plain 全体的に「粘土質で剥がれやすいペラ石」だそうな。

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  やっぱ緑色片岩 ↑↑、好きだなあ    蛇紋岩 ↑↑ もたまらん・・・っっ

くうっ 家の庭に飾りたい・・・っっ 買うと高いんだよなあああ。。。

中央のジオラマは、大鹿村を南北に走る鹿塩かしお谷」(鹿塩かしお川)の模型(手前が南)↓
ボタンを押すと手前の地面がさがって、各種の断層を展示します
「領家帯」(花崗岩) ↓↓    ↓↓「 山波川帯」(緑:緑色片岩)  ↓↓「 四万十帯」(緑灰色:砂岩)

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三波川と四万十の間のシャーベットオレンジ ↑↑ は「 秩父帯」(肌色:泥質岩) 

もちろんこの部屋も壁一面に渾身の中央構造線解説展示がグルリ貼られてて凄い。
中央構造線ってなに?」「そもそも構造線ってなに?」いやこれさっき散々f:id:wistorian:20190926193801p:plain

断層が複雑な南アルプスにも言及 ↓↓

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(豊口山南麓からの)「塩見岳登山道では付加体の全ての岩石が見られる」とか、「赤色チャート(※)があるから赤石山脈」とか・・・・・・登りたくなるうぅ
         ※鉄分を含むチャートプランクトンの死骸が堆積した岩石)

 

奥の壁面は「北川露頭」で剥ぎ取った地層の実物展示。
中央構造線の地層が実際見られる露頭は、鹿塩かしお谷の北の「板山露頭」伊那市)から
「溝口露頭」「北川露頭」「安康露頭」「程野露頭」飯田市)とありますが・・・
 ↓↓ 雨だし通行止めだしで、またの機会に。

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さて、次は西側の小部屋。地震やプレートの解説展示です ↑↑
 ①プレート境界地震
 ②「大陸プレート」内の浅い地震
 ③沈み込む「海洋プレート」内の地震(←「首都直下型地震」はコレ?)
地震は、今はこの3種類に分類されるらしい。

この部屋から外の↓↓「電子基準点」も見える。

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これで ↓↓地殻変動(上下も水平も)が計測できるんだって。

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2Fの小部屋は「砂防の体験」で、土石流や大西山崩落の展示が ↑↑ マサ土サバ土に触れます。視聴設備もあったから、イベント中は何か上映するのかな?

階段の下にもMTLの何かがあった。とにかく中央構造線だらけ断層だらけ、お腹一杯。。。

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<塩の湯>
ミュージアムショップは無いしカタログもありませんが、その分撮影OKで、岩石系の書籍もバッチリ揃ってました ↓↓  ↓この記念講演記録(¥700)がホント凄くて

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      右図は博物館の展示にあった、講演内容と同じような図↑↑

鹿塩かしお温泉と有馬温泉は同じ種類の温泉だ」というテーマを証明するために、水素同位体×酸素同位体のグラフやヘリウム4・リチウムの含有量まで用いて、最終的には温泉の全ての種類の起源を解明するという――  これは私も、ずっと前から疑問に思っていたことでした。いずれ原稿にも必要で、でも調べても全然出てこなかった情報で・・・そうでなくとも¥700以上の価値がある濃密さ(この内容でよく2時間で足りたよね)! こういう本が欲しかった・・・!!

この鹿塩かしお温泉はかなりの量の塩を含んでいて、煮詰めれば「山塩」が採れるそうです。「山塩」は、海水と同じ成分だけどニガリがほとんど無い、人体に優しい優良塩。塩川の川水にもかなり含まれていて、1日2トン(村の合計)もあるとか。

そういえば「山塩」道の駅でも売られていたし、地元の和菓子・洋菓子にも山塩モノが溢れてました。 ↓↓もちろん買った!

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温泉は「鹿が好んで飲んでいるのを諏訪神が気づいて発見」。(牛の塩舐めは知ってるけど、鹿も??) 大鹿村の名も、ここから来てるみたい。温泉としては普通に「ナトリウム塩化物泉」で、残念ながら冷泉です。小渋川上流の小渋温泉(コロナ休業中)は「炭酸水素塩泉」ですが、こちらも冷泉。
この「内陸の塩湯」は大変珍しく「有馬型温泉」に分類されるそうだけれど、高温の有馬と違ってこちらが冷泉なのは「熱されてから長い間地下に停滞して冷めてしまった」のだとか。「有馬型温泉」の特徴は「専ら中央構造線沿いに湧出」していて、海洋プレートが沈み込んで岩石から脱水された海水が起源の温泉――
そういえば四国にも内陸に塩湯あったけど、中央構造線沿いだ。。。

色々と、勉強になりました。

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<秋葉街道>
この鹿塩かしお川、中央構造線の断層谷鹿塩かしお谷)を北流して高遠から西に折れると伊那下島で天竜川(諏訪湖発)に合流、その後は思いっきり南流して静岡県浜松市で太平洋に注ぎます。信濃川ほどではないけれど、結構な長旅。

で、R152はこの断層谷をブツブツ切れながら古代の「塩の道秋葉街道を踏襲して
太平洋沿岸まで南下しています。
 大鹿村から一番近い有名観光地は、近年「天空の里」とかで有名になった下栗の里(日本の里100選)がある「遠山郷」(飯田市)でしょうか。
飯田市「信州の小京都」と呼ばれ、水引飾りや和菓子屋が多く、天龍峡の川下りや散策路が充実。宿泊施設も駅前・IC近くに豊富で便利。

秋葉街道の中盤では「秘境駅だらけのJR飯田線」の一部と並走し、その後は中央構造線から離れて(代わりに飯田線中央構造線に付いていって/笑)天竜川と合流します。街道名の由来である秋葉山は、全国の秋葉神社(火伏の神)の総本山。最後は東名高速を越えて、ウナギと銅鐸浜松市市街地へ。

マイナーですが、色々と興味深いエリアです。。。
R152のバイパスである三遠南信自動車道(飯田~浜松)が完成したら改めて南信
旅行して、そのまま静岡(遠州)へなだれこみたい