色々登山をしていると、落し物を拾うことが多いです。
今回はそんなお話―――
*******************
この日はいつもの北ア・常念岳(三股ルートに限る)からの下山中、ハイマツ帯で「フライ(赤)」(※)を拾いました。
※テントの上に張る、防水用の幕。最近のは軽量でテントセットと別売りが多い。
時刻は13時台。専用袋に入ったままハイマツにひっかかってブラさがっていたので、先行者が気付かないわけもないのですが・・・・なぜか誰も拾わず、ユラユラ揺れていました。触ると袋は乾いているのに、中のフライ本体はシットリ濡れてます(=昨夜使ったものであって、登山者ではなく下山者が落としていったモノ)。
今までの経験から言って、追いついた人全員に「落としませんでしたか?」と聞いてもヒットしたことは一度もないし、今日は「下山ゆっくり党」なので、追いつけるかどうかもわかりません。が・・・
「下山者のモノ」ならば、ここにあっても確実にゴミになるだけです。
先日、壮大なゴミ(テントの皮)を二ノ俣に飛ばしてきた者としては・・・・ふふふ・・・当然、回収・一択!!
とにかくキャリって、三股登山口の「落し物トレイ」にでも置いていこう。。。。
ところが。
森林帯に入って「尾根出合い」に着くと、女性二人がちょうど休憩を終えて出立しようとしていました。いつもムダを承知で聞くのですが、その2名に近づくと・・・
おや? 二人のうち一人は、赤いザックに赤い服です・・・・。
いやいや、期待しちゃイケない。今まで一度だって、落し物を持ち主に手渡せたことなんて無いんだから。。。でも、形式的に一応、聞いてみました。
W「赤いフライ、落としませんでした?」
A「・・・落としました!!」
え? 今なんて言った!!?
W「それって・・・それって・・・」(←動揺)
言葉で言うより見せた方が早い。自分のザックのサイドポケットにしまったフライを「これ?」と指さすと、二人して「あああああああ――っっ!!」と大歓声。
W「ホントにこれ?!」
A「コレですうう――っっ!!」B「凄い、コレ――っっ!!」
3人「ええええ――っっ!!」
A「もう諦めてたんです。
でも諦められなくて、登山道を戻ろうかとか思っていたところで・・・!!」
W「こっちだって、まさか落とし主に会えるなんて、初めてですよ・・・っ!!」
感動のあまり思わずハグして、記念撮影までしちゃいました。。。。
何でもこのフライはお気に入り(やっぱり赤コーディしてたそう)で、落としたことでかなり落ち込んでいたとかで、追いついてきた人に聞いても「ああ、あったよ」と言うだけで誰も拾ってきてくれなかったので、半ば恨んでいたとか。。。。
「普通、拾って持ってきますよねえ?!」
いや、残念ながら、そうでもないんです。。。
*******************
落し物に気付いても、登山者のモノか下山者のモノかわからなくて迷うのか、「取りに戻ってくるかもしれないし」と思うのか、他人のことなど知ったこっちゃないのか、気遣う余分な気力も体力もとうに果てたのかはわかりませんが・・・・・・実際はそのまま素通りする人がほとんどです。
でも、例えば今回のフライ(薄いナイロン)なんて、雛ライチョウがハミハミしたら、胃に溜まって死んでしまいます。食料だった場合は、野生動物の餌付けになっちゃいます。金属なら、酸性雨に溶けて有害物質を出すかもしれません。。。山にとってのメリットは、確実にゼロ。
だから、落し物へ対する正しい対応は確かに、どのルートだろうととにかく拾え、どこかに安置しろ。
コレ、基本です。
下山者登山者どちらのモノにしても「拾って登山口に降ろす」が正しいのです。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「山頂や小屋で落とし主遭えるのでは?」と登山者が拾っていくのも、もちろんOKですが、落とし主に遭えなかった場合はどこかの登山口まで降ろすか、下界できちんと処分しましょうね。
落し物を小屋に預けるのは、小屋の負担になるので×。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
何がベストなのか迷って「拾わない」を選ぶ人。
これが一番ダメ。です。「落し物= ゴミ」です。「拾う余力すら無い」なら仕方無いですが、極力拾いましょう。
*******************
実は、一番よく拾うのは、ストックのキャップです。
縦走すると、1~2個拾います。
これは処分せずにザックに貯めておいて、キャップ無しのストックに全体重を預けるようなマナーの悪い登山をしている人を見つけては、「宜しかったらこれ・・・」と差し出しています。趣味です。
そんなこんなで、とにかく色々拾って処分してきたW。
人生ハツの、記念すべき落し物直接返★還でした。乾杯!